2016年08月12日
介護士の喀痰吸引等制度って?たん吸引の処置をするための手順と研修
介護職員が利用者のたんの吸引や経管栄養の注入ができるようになった「喀痰吸引等制度」。介護業界にはとても必要な制度です。今回は「喀痰吸引等制度」について詳しく見ていきましょう。
目次
喀痰吸引等制度の必要性
痰がたまると肺炎や呼吸困難の原因になります。ときには命を落としてしまう原因にだってなりかねません。重度の要介護利用者の口腔内に痰や分泌物がたまり、吸引が必要な場合に、介護士がその場で吸引するのと、医療職員を呼びに行ってから吸引を行うのでは、危険にさらされるリスクが違いますよね。
夜間等医療職員がいない場合や医療職員がいない施設で、利用者が経管栄養になった場合、介護職員が経管栄養を行えなければ、その施設では対応できなくなってしまうのです。より安全に、より安心して利用してもらうためにも、喀痰吸引等制度は、介護職員にとって、とても必要な制度なのです。
参考:これはできない?ヘルパーができる医療行為の範囲を押さえておこう
喀痰吸引等制度の種類と研修内容
喀痰吸引等制度には第1号研修、第2号研修、第3号研修の3種類があります。
第1号研修
第1号研修は、不特定の利用者のたんの吸引(口腔、鼻腔、気管カニューレ内部)、経管栄養(胃ろう又は腸ろう、経鼻経管栄養)を行います。50時間の講義とたん吸引(口腔、鼻腔、気管カニューレ内部)、経管栄養(胃ろう又は腸ろう、経鼻経管栄養)の演習の後、実地研修を行います。
第2号研修
第2号研修は、不特定の利用者の口腔内、鼻腔内のたん吸引と、胃ろう又は腸ろうの経管栄養が可能になります。こちらも、50時間の講義とたん吸引(口腔、鼻腔)、経管栄養(胃ろう又は腸ろう)の演習の後、実地研修を行います。
第3号研修
第3号研修は、特定の方に対して行うための実地研修を重視した内容となります。ALSなど重度障害者等の利用者を対象としており、8時間の講義と1回の演習、実地研修があります。実地研修は、医師などの評価により、受講者が知識及び技能を修得したと認められるまで行われます。
介護施設で喀痰吸引等を行うためには
介護施設で喀痰吸引等を行うためには、どのようにしたらよいのでしょうか。
介護職員の場合
介護職員が施設で喀痰吸引等を行うためには、喀痰吸引等研修の受講後に発行される修了証明書を都道府県に提出し、実施できる行為が記載された「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けることが必要です。
介護福祉士の場合
これから介護福祉士を目指す人は、国家試験合格後、施設などに就業し、実地研修を修了すると「修了証明書証」が交付され、「介護福祉士登録証」の変更が必要となります。介護福祉士の養成課程で実地研修を受けていない場合にも、研修と介護福祉士登録証の書き換えが必要になります。
既に痰の吸引等を行っている場合
実質的違法性阻却通知等により、既に一定の要件の下でたんの吸引等を行っている場合は、都道府県に知識・技能を得ている旨の証明手続きを行い、「認定特定行為業務従事者認定証」の交付を受けます。
最後に
介護の現場において、機器を使ってのたん吸引や経管栄養は、医療行為であり、介護職員だけではできない処置でした。しかし、喀痰吸引等制度が始まり、介護士でもたん吸引や経管栄養が行えるようになり、施設でも迅速な対応ができるようになりました。しかし、あくまでも、「医師の指示のもと」、認定証に記載された行為のみを行うのが原則となっています。
まだ喀痰吸引等制度の研修を受けていない介護士も少なくないとは思いますが、利用者により安心・安全なケアを提供するためにも、喀痰吸引等制度の研修を受けてみるといいですね。自分のスキルアップにもつながりますよ!